雑誌で読んだ時は、どうしようもないクズだと思ってた三井が救われて、本当に良かったです。
描きおろしの、その後の話がとても良くて。これで三井という一人の男の救いの物語になりました。ああ、ほんとに良かった…。
妻子ある三井は実はゲイで、本当の自分を偽って生きてきました。その結果なのか離婚となり、残ったのは養育費と慰謝料とマンションのローン。しかも生活は荒れていき、会社も辞めちゃうんです。
アパートの隣に引っ越してきた男は、高校の時に三井に告白してきた曽根でした。
ゲイの曽根は同居人に片思い中。それを脅迫のネタにして、三井が曽根を襲う。タバコの火を腕に押しつけたり、やることが酷いです。ほんとゲスだと思った、雑誌で読んだ時。三井の酷さとそれを甘んじて受け入れる、包容力ありすぎな曽根。
曽根は三井への告白をばらされていじめに遭い、転校までしてます。なのに何度か読むうちに、三井の方が苦しそうに見えてきました。曽根も同じゲイだけど、彼はそういう自分を認めている。まだ三井ほどの苦しさはないんですよね。
中学時代の三井の話が収録されてます。
「ふつう」であるために、彼はこの頃に道を決めてしまったんだろうな。
三井少年のさらさらの髪とか細さとか、もう受けにしか見えないんだけど…。
教育実習生への本当に淡い、初恋かもしれない想いはとても苦くて。三井のその後を知ってるから、一層そう思うのかも。
あと、結構驚きだったのは、ほんとのところ三井は受けが向いているみたいで。確かに描き下ろしの三井の表情が、とても初で、赤くなって涙を浮かべています。それが中学生の時を彷彿とさせました。
まだこの時から三井は成長できてなかったんだよな…と思うと少し切なくもなりました。でも曽根はちゃんと分かってくれてるから、きっと大丈夫です。
二人の先にあるのは良いことばかりじゃないかも。
そう思えるのはきれいごとじゃない描写がしっかりとあったし、そのせいかリアルに感じられたんですよね。BLに夢を求めてますが、こういったリアルさを感じられる作品もいいなと思いました。だからこそ、二人には幸せになってほしいと願うのかもしれない。
この一冊で、三井という男の半生が描かれていました。あとがきにもあったように、三井と曽根が笑顔で暮らせますようにと願って本を閉じました。
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