書店でよく一穂さんのお名前はお見かけしてましたが、やっと読みました。
表題作とその後のお話が収録されてます。
最初は「生意気な受?」と思ったけど、第一印象はすぐに変わって
この物語の世界に入ってしまった。…相変わらず、うまく書けないなぁ。
綺麗なタイトルだと思ってたら、北原白秋の短歌の下の句でした。
「君かえす朝の敷石さくさくと雪よ林檎の香のごとくふれ」
ちっとも知りませんでした。ちょっと調べてみたら、好きな短歌の一つがこれ、と書いてる方が何人かいたので有名なんですね。
この歌の詠まれた背景は生々しいのに、歌は清々しい甘さがあります。
“林檎の香”ってが初恋のイメージします、私は。
15才で攻と出会って、男で教師で、でも好きになって
それを恥じることも諦めることもなく、受は攻を好きでいます。
強い人だと思った。年上の攻の過去も丸ごと大切に想っている。
二回振られても、諦められないほど。
「俺はちゃんと先生を幸せにしてる?」って訊けてしまう、何て言ったらいいんだろう、
無自覚な自信みたいな、攻への揺るがない気持ちがあるんだと思った。
攻の過去というのが、婚約者のいる教師(女性)に恋をして、教師は妊娠してしまいます。
男の子産みましたが婚約者と結婚、札幌で家族3人で暮らし、攻は時々写真を送ってもらうだけ。
白秋の短歌とちょっと重なるかな?
攻の重い過去が関わっているのに、物語全体に綺麗な雰囲気があります。
ほんと語彙なくて恥ずかしいけど、独特な綺麗な作品です。
受も受験に二度失敗し、子供が生まれる家に居場所がないと思っていて、
二人とも表に出さないけど孤独なんですよね。
若い受が攻を支えてる気がします。守っているというか。
学校さぼって札幌まで攻の子供を、こっそり見に行くんですが。
幸せでいるのかを会えない攻の代わりに、自分がその姿を確かめに行く。
無鉄砲ですが、ほんとに攻が好きで攻の為なんだなぁと思いました。
書下ろしでは、受は高校3年になってます。
嫌々行った合コンで、OBの栫(かこい)と出会う。
この人多分受を好きになって、でもそれを伝える方法を間違えたんだよね。可哀想な人だな…。つい脇役に目がいってしまいます。
彼の心の奥の秘密を、素直に吐き出せる人と出会えればいいけど…。って、また妄想しちゃった。
作中の『猿婿入』の話。
ひどい仕打ちされても死に際に、「俺はほんとにお前が好きだった」と言ってしまえる
真っ直ぐな気持ちは、受にも攻にも当てはまると思った。
表題作から書下ろしへの時間の経過があって、攻がすごく受を好きになっていて。
読んでて何だか嬉しくなりました。
どちらのお話も、ラストに雪が降ってます。
子供の時に珍しい大雪になって、ぼたん雪がぼんぼん降り続ける中、
一人で近くの畑の空き地まで歩いて行ったことあります。
とても静かで真っ白な景色には誰もいなくて、まるで自分だけのような錯覚を一瞬味わいました。
昔々の記憶です。美化してたとしても、多分忘れない思い出。
そういうの一個ぐらいあってもいいよね、と思うのは
この作品を読んで感傷的になったんだと思う。
新刊も気になってるので、読もうと思っています。
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