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「ニタイ ピリカ」はBL漫画・小説(たまに非BL)の感想を好きなように書いたブログです。ネタバレしてますのでご注意ください…
 

 

 
杉本苑子全集〈3〉傾く滝杉本苑子全集〈3〉傾く滝
(1997/06)
杉本 苑子

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昔話をひとつ。

むかーしむかし、私が二十才位の時ですかね、当時はBLというジャンル名はなくて
耽美系、ジュネ系とか本売り場に書かれて、ずっと種類も少なかったと記憶しています。
どっちかと言うと先に同人誌を読むようになって、それから商業誌も同時に
読んでいました。

山藍さん、榊原さん、読みつつも、私は純文学や歴史物の中に
男同士の話を探していました。
当時『活字倶楽部』を参考にして読んだ、『仮面の告白』『草の花』『帰らざる夏』
『人形たちの夜』『恋人たちの森』『十二神将変』。
そん中でも多分一番好きなのが、この『傾く滝』かもしれない…。

前に記事にも書いたのですが、この全集の杉本さんご自身のあとがき。

「翳り、罪の意識さえ伴った男同士の愛。そこには信義が貫かれ、命を賭しての爽やかな
連帯さえ生じると考えられていたのです。
「性における“正常”とはなんなのか?」などと人にも自分にも、
改まって問いかける気は私にはありません。昏い、忌むべき変則な性…。それでいいのです」

だいぶはしょって書きましたが、読んでてはっとさせられました。
そして、この小説を「まったくの恋愛小説と言うほか、答えようがない」とも書いていらっしゃいます。
これは時代小説でなく、恋愛小説なんだ。
昏く忌むべき恋でもいいんだ。
すごーーく嬉しくなったのを覚えています。


続きます…。 

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舞台は江戸時代。実際の人物、八代目市川団十郎が主役です。
この人は人気絶頂の中自殺をしたそうで。その自殺は謎だそうです…。

華やかな歌舞伎の世界の裏側が丁寧に描かれて、多くの登場人物に私の脳ミソは付いていくので精一杯…。
次々に色んな跡目争いだの、大火事が起きたり、女同士の争いだの、
天保の改革だのとにかく出来事が多いです。

それでも読んでしまうのは、やはり類いまれな美貌を持つ団十郎と、
彼が一生賭けて恋する浪人・宮永直樹の存在です。

幼い彼が川に飛びこんだのを助けてくれた訳ありの浪人、宮永直樹。
これが縁で家庭教師として市川家に出入りするようになり、我が侭な団十郎を叱りつけ、また助けたりする。
子供ながらに肉親との葛藤に悩んでいた団十郎は、宮永に次第に惹かれていきます。

この宮永は、江戸へ幼い妹と共に逃げてきた。兄嫁と姦通して兄を殺した宮永は、
そのあだ討ちを待っているんです。いつでも殺される覚悟は出来ている。
それなのに団十郎の求めに応じてしまった。
団十郎はその過去を知らない時でも、宮永の心が自分に無いことを知っています。
宮永は絶望や恐れを、団十郎の身体に埋めている。
団十郎は自分ではとうてい埋められない、深い淵を抱えていることを知っている。

そんな理由で自分を抱く宮永が憎い。でもその束縛の強さ、無慈悲さを身体が欲しながら
どうにか助けてあげたい、と願ってしまう。
自分は宮永に捕われた罪人、だと団十郎は言う。
そして、宮永の劫罰を知った団十郎は、泣きながら言うんです。
「生ききってください。それがこのわたしを生かすことになるんです」

でもねー、結局生ききれなかった。
「いつか必ず二人の仲は壊れる。そう予感しながら、この美しいものをわたしは傷つけた」
その償いに、どこにも行かないでと迫る団十郎。
約束出来ない、という宮永。
重いですよねー…。書いてる自分もそう思う…。

宮永は息をひきとる直前、団十郎の名を呼ぶ。
私は、あんなこと言ってたけど宮永は、本当は団十郎を愛してたと思うんですよね。
絶対そうだよ。
でも、団十郎はそう思っていないのが、ほんとに切ないです。

宮永を想って不安になって憎んで、離すまいと懸命になったあいだ、団十郎は生を実感していた。
二人の辿った結末を知ると、忌むべき恋なのかもしれない。

けれど、恋することが生きていることだと思えるなら、
この物語は簡単に悲恋物だと言っては、いけないかもしれないです。
本当に恋愛小説でした。
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NAME: | 2011.08.17(水) 01:27 | | [Edit]

 

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立夏

Author:立夏
BL大好きで感想・思ったことなどを、好きなように書いてます。
好きな本ばかりなので、独りよがりなってる自覚はあります。

ほとんどネタバレしてますので、ご注意下さい…。

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