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「ニタイ ピリカ」はBL漫画・小説(たまに非BL)の感想を好きなように書いたブログです。ネタバレしてますのでご注意ください…
 

 

 
紺青のわかれ
久しぶりに『純文学』のカテゴリで記事書きます。

画像は箱なんですが。本体は薄いクリーム色でタイトル文字が押され、
表紙裏は、茄子紺のような濃い色がきれいです。装丁と挿絵はデューラーの版画が使われてます。

まず、タイトルに惹かれます。一体どんな小説なんだろう、って。
耽美っぽいのばかりじゃないですが、それを期待する私。
『月蝕』なんてわくわくして読んでたら、驚きのラストでした。
地下室に生きたまま閉じ込めるのって、『悪魔の花嫁』であったような、なかったような…?
想像させて終わるラストは好きなので、驚いたけど好みでした。

この本には好きな短編が幾つかあって、この『見よ眠れる船を』もその一つです。
読後に何ていうか、無力感みたいなのを感じた。
父と息子の二代の恋の話。息子・檜嗣(ひつぎ)が一応メインだと思います。

招待の手紙を貰い、出雲の宍道湖のほとりの、檜嗣の自宅を訪ねた驟太(しゅうた)。
先日葬式が済んだばかりの、陰気な妙なざわついた雰囲気の中、物語は始まります。

よろしかったら、どうぞ…。スミマセン、長いです…。
 

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檜嗣と驟太の出会いは、寄稿している機関紙の論文でした。
お互いの論文に感動して始まった文通は、次第に近況まで書くようになっていく。
機関紙の総会で初めて顔を合わせ、眼差しは溢れる言葉の代わりになるほどで、
檜嗣は「ハドリアヌスに倣うかい?」と冷やかされ、真っ赤になってしまう。

ハドリアヌスって、「ローマの五賢帝の一人で男色家」だそうです。
男色家…って、初めて文字で打った。
総会の夜に酩酊した驟太と檜嗣は、ホテルで合流します。
『雅歌』の一節、「愛のおのずから起きるときまでは、ことさらに喚び起しかつ醒ますなかれ」。
二人の間に、愛はよびさまされた。
けれどもその愛は別の女に注がれて、檜嗣は家同士の縁で結婚してしまう。
二人の上に別々の時間が流れ二年が経って、冒頭の自宅を訪れるところに戻ります。

檜嗣の妻が、他の物語同様に怖いです。
湖上の船で二人が逢引しているのを分かってて、吐く言葉や態度が毒々しい。
「花野」という船の名前にかけて、「昔から花野には、男郎花(おとこえし)しか咲かない
ことになってるわ」って。
嫌味の次元を優に超えている、伊勢神道の血を引くこの妻の“呪詛”のようです。

檜嗣は15才の時、花野で父と下男の逢引を見てしまった。
父は白い背を向けて横たわり、そのそばに赤銅色の下男が立ち、汗まみれなのに
微笑をたたえていた。…下克上で年上受です。
2人は主従の関係以上でした。だから主は後妻をもらわず、下男は生涯娶らず、
主の臨終間際の「待っている」という言葉に、後を追おうとしたほどだった。

そのせいか主の息子・檜嗣と驟太の仲は、自分のようにしたくないと思ったのかも。
下男は花野での逢引を準備万端、誰にも悟られぬよう整えます。
でも妻は知ってたけどさ…。

檜嗣の叔母、色男な通いの漁師、妻が実家から連れてきた女中などなど、
本音を見せつ隠しつの会話の応酬が怖い…。
通いの漁師の、「大旦那から養子になるように言われた」発言は、ええ?! でした。
下男一筋じゃなかったの? こんな風に、煙に巻かれた感があるんだよなぁ。
誰の言葉が真実なのか分からない。私の読解力のなさなんですが。
だから読み返すけど、少なくとも下男の気持ちは真実だったと思う。

湖の上で花野は炎に包まれている。
そこには背の高い、老僕の姿がありありと浮かんで消えた。
長年仕えた主の後を追ったのか。
船を奪われるぐらいなら自らの手で消す、そんな決意があったのかもしれない。
そして自分の存在さえも。

これほどの決意が、檜嗣と驟太にあるのか分かりません。
燃えていく船を誰にも知らせず、ただ立ち尽くすだけの2人には、ないんじゃないだろうか。
そう思いました。
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立夏

Author:立夏
BL大好きで感想・思ったことなどを、好きなように書いてます。
好きな本ばかりなので、独りよがりなってる自覚はあります。

ほとんどネタバレしてますので、ご注意下さい…。

記事に拍手や拍手コメを、いつもありがとうございます。
拍手コメのお返事は、該当の記事に書かせていただいています。お時間ある時に見ていただけたら嬉しいです☆

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