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「ニタイ ピリカ」はBL漫画・小説(たまに非BL)の感想を好きなように書いたブログです。ネタバレしてますのでご注意ください…
 

 

 
色彩の息子 (新潮文庫)色彩の息子 (新潮文庫)
(1994/05)
山田 詠美

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『色彩の息子』は、12編の短編集です。

それぞれの短編のイメージだと思う色紙が、それぞれに挟まれています。
赤の『声の血』は正気と狂気の間を描いて、しかも隠微でこれも好きな話です。

一番好きなのは、この『ヴァセリンの記憶』。同性愛の話です。

初めて読んだ時、20才前だったかな~?
強烈な印象を受けたのはいまだに覚えてるけど、内容忘れてたので久しぶりに読み返しました。
相変わらず好きなように、そして長々と書いています(笑)。

お時間ある方、どうぞ…。

以下に畳んでいます。
 

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「ぼく」の一人称で進んでいって、すぐにこの世界に入り込めてしまう。
流暢な文体が素晴らしいです。何だか絵が浮かぶような。
冒頭の「ぼく」の告白は、圧倒され引き込まれて読んでました。
彼から汚されたい、犯されたいという願いが、湧き出るように綴られている。

同じサークルの池田さんは、男から見てもかっこよくて女子から一番人気。
だからってチャラチャラしてないし、サークルには少し顔見せる程度で、
バイトとカンヴァスに向かうので忙しい人です。

サークルの女子達の中で一番美人の礼子が、池田さんに告白しますが断られる。
その理由を「ぼく」に聞いてほしい、と頼まれます。礼子は、自尊心の塊のような人。
仕方なく「ぼく」が彼に訊ねると、時間と場所を指定されます。
貰った地図にある店は、ゲイが集まるバーでした。

性癖への質問はさらりとかわされ、したたか酔った「ぼく」は気付くと彼の部屋にいました。
「誰にも言うなよ」と、何度も口付けられる。
これが「ぼく」が変わる本当の始まりになったと思うと、
池田さんは端からお見通しだったんじゃないか、なんて勘繰ってしまいます。

礼子の相談を受けるうちに、何となく一緒に過ごし、何となく付き合いだした「ぼく」。
ようやく我に返ったのは、彼女が買ってきたヴァセリンの容器を見た時です。
「ぼく」は思い出しました。

甘い匂い、甘い言葉、彼の瞳、目覚めた「ぼく」の本性。
池田さんの部屋のベッドの枕元にあった、同じ黄色の容器。
夜明けの部屋の窓辺で、彼はカンヴァスに寄りかかってうすら笑う。
ほんの7行程度の文章ですが、読んでいる私は黄色がちらちら浮かんできました。

礼子を好きだと言いながら、「ぼく」は彼の部屋を探し、
たった一度行ったあのバーを探し当てます。
彼女を裏切る後ろめたさは、これっぽちも感じないです。
あるのは、歓び。

“真実”の自分に目覚めた「ぼく」を、池田さんは待っていました。
「ずい分と遅かったじゃないか」という言葉と共に。
遠回りした「ぼく」を待ってた、先輩の純情みたいなものも感じる。

古いジーンズからのぞく、池田さんの香ばしいくるぶし。
「香ばしいくるぶし」って表現、どうしたら思いつくんだろう。
きっと浅黒くて骨ばって、舐めたくなるようなくるぶし。…はい、いつもの妄想です。

二人の濡れ場の描写なんてないのにエロさがあって、そして何て言ったらいいのか、
爽やかさみたいな読後感。「ぼく」と池田さんが、ようやく全うした達成感みたいな…。
エロいのに爽やかって、どういうこと、私。
きー!、ほんと自分の語彙のなさが嫌だ…。

この本には、それぞれの短編を象徴している色紙が挟まれていて、
このお話ではラスト1P前に、黄色の紙が挟まれてます。

池田さんと過ごした、あの晩の記憶を甦らせる色。
「ぼく」の人生を変えた、妖しくて幸福な黄色でした。

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立夏

Author:立夏
BL大好きで感想・思ったことなどを、好きなように書いてます。
好きな本ばかりなので、独りよがりなってる自覚はあります。

ほとんどネタバレしてますので、ご注意下さい…。

記事に拍手や拍手コメを、いつもありがとうございます。
拍手コメのお返事は、該当の記事に書かせていただいています。お時間ある時に見ていただけたら嬉しいです☆

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