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「ニタイ ピリカ」はBL漫画・小説(たまに非BL)の感想を好きなように書いたブログです。ネタバレしてますのでご注意ください…
 

 

 
塚本邦雄全集〈第7巻〉小説(3)塚本邦雄全集〈第7巻〉小説(3)
(2000/12)
塚本 邦雄

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こんなちゃちいブログに書いてしまうことが、大変恐れ多い…。
でも書きます、好きなので!

近代短歌を代表する歌人であり、作家であり、評論も書かれる塚本邦雄氏。
あとエッセイや歌論などなど、とにかく色々書かれてらっしゃいました。
私の拙い説明よりも、ネットで見ればすぐに分かるな。
しかもBLじゃあないし…。じゃあ何かと問われると、「純文学」なのかな…。
ここでは、私の好きな小説ということで紹介させて頂きます。


歌集はもちろんですが、小説も多く出版されていてそれらは絶版が多いです。
『塚本邦雄全集』で読めますが、一冊9000円以上するので、
私は図書館で読んでました。

塚本氏の短歌が好きです。一度では読めない旧仮名遣いが、別世界のように感じられて。
だから、同性愛を歌っていても、私はすんなり入り込めてしまいます。
たとえば…。

ほほゑみおのづから湧く姉の愛人の一人こそおとうとの恋人

なんて、字間から物語が想像できてしまう。見え隠れするというか。
姉は本当の弟の姿を知らないんです。愛人が何人もいるぐらいだから、姉も相当だと思いますが、
弟もまた違った端整さなんだろうな。美しい笑顔を妄想しちゃいますよ。

こういう歌が詠めるって、ほんとにすごい。
すごい、しか言えない自分の語彙の貧困さにがっかりしながら(あーあ…)、
タイトルの作品読んで感じたこと、書いてます。 

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『鷹の羽違ひ』は、『夏至遺文』という短編集の中に作品の一つです。

塚本氏は短編のことを“瞬篇小説”と書いています。一瞬の儚いもの、ってイメージでしょうか。
ぴったりだなぁ。
この本には他にも、『如月の鞭』『霞の館』『葡萄鎮魂歌』『異床同夢』など収録されてて、
塚本氏のタイトルは一目見ただけで、一体どんな話なのかわくわくして読みたくなるものばかり。
『異床同夢』は、後日また書こうと思います。

明日婚礼を控えた弟が、夜中になっても帰ってこない。
姉は心配しながらも、仲人や花嫁の実家への義理や煩い条件が嫌なら破談にしてしまえ、とも思っている。
弟の為に貯金を使って誂えた絹の紋服を広げ、
その鷹の羽違いの家紋を見つめて姉は目を瞑る。
風切羽の中の二枚を抜き取られ、飛び立とうにも飛べない弟の切羽詰った悲鳴が聞こえる。

弟は間違いなく結婚を嫌がっています。
表情は暗くなり、この一週間はぼおっと宙を見つめていたり。
何故破談にしないのか、姉じゃなくても私も思いました。
附子はどのくらい飲むと死ぬんだっけ? なんて姉に訊いたりして後ろ向きだし。
でもそれは羽を無くして、本来の姿で飛べないからなのかも、と思うと納得する。
彼なりに、家紋=家のためなのかもしれないし…。
家といっても、父が競馬で大損して外科医の卵だった弟の開業資金もなく、
ささやかな漢方薬局を営んでいる家なんですけどね。

姉視点で語られているので弟の気持ちは、最後の最後まではっきりしません。
ただ姉はがんじがらめになった弟は、死を考えているんじゃないか、と思っている。
このへんもすごく冷静に書かれてます。
そして深夜に、弟から電話があります。これが初めて弟が語る言葉。
「姉さん俺帰らないよ。堪えられない。俺は死にたい」と…。
姉が止める間もなく電話は切れます。
その直前に電話の向こうから、弟の名を呼ぶ低音が聞こえる。
しかもその苦く甘い声には、聞き覚えがあった。

最後に姉は涙を流します。
ずっと語り役に徹していた姉が、純粋に弟の身を案じる普通の姉になった。
両手で顔を覆ったその暗闇に、二枚の鷹の羽が沈んでいく。
それは弟の為に作った礼服の家紋であり、
自分の人生を自由に飛べなかった弟の捥がれた羽。
そして去って行った弟と、もう一人の男でもあるんじゃないでしょうか。

限られた短い枚数で、無駄な言葉が一つもない。
もう一人の男が誰だろうか、二人の関係がどんなものであろうが、今では詮無いこと。
こうするしかなかったんだ、と思ったら読んだ私にも暗闇が見えた気がする。
その中を音もなく、どこまでも落ちていく二枚の羽が。

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立夏

Author:立夏
BL大好きで感想・思ったことなどを、好きなように書いてます。
好きな本ばかりなので、独りよがりなってる自覚はあります。

ほとんどネタバレしてますので、ご注意下さい…。

記事に拍手や拍手コメを、いつもありがとうございます。
拍手コメのお返事は、該当の記事に書かせていただいています。お時間ある時に見ていただけたら嬉しいです☆

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