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「ニタイ ピリカ」はBL漫画・小説(たまに非BL)の感想を好きなように書いたブログです。ネタバレしてますのでご注意ください…
 

 

 

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私ガ初メカラ感ジテイルあんどれヘノ関心ハ、特種ナモノデアリ、ホトンド好意ト呼ンデモイイモノダッタ。
ニモカカワラズ、ソレハ控エメデ、カクサレテイタ方ガズット幸福デアルヨウナ種類ノモノダ……。

あんどれニハソンナ友達ナド必要デハナイニ決マッテイルノダカラ…



 初めてクラスメイトの佐倉 諒と話したのは、新しいクラスに少しは馴染んできた四月の終わりの頃だった。

 出席番号順という、単純明快な方法で決まった二人一組の日直で初めての当番の日、担任から頼まれたのはプリントの印刷と仕分けの作業だった。
笹田瑞穂は佐倉と職員室に連れ立った。
半歩前を行く佐倉の後ろ姿は笹田よりも十センチほど高く、座高は同じくらいなので脚が長いのだと理解した途端、自分の体型と比べてしまい軽く項垂れた。
細いのだが筋肉が引き締まっていて、多分スポーツをやっていたのかと想像する。
笹田のコンプレックスを刺激させる、羨ましい体型だ。
中学では勉強ばかりで運動は嫌いでないが、決して得意でない自分の痩せた体を思いださせる。
「…どうした?」
 振り向いた佐倉が、問い掛ける。
 無意識に立ち止まっていた笹田は慌てた。
「あ、ううん。ごめん」
 授業中に指されて答える時の無機質な印象とは違う、初めて聞いた柔らかい声音。
そして正面からまともに見た、佐倉の綺麗な黒目がちの瞳。
笹田は、戸惑った。
驚いたのではなく戸惑った自分自身を、笹田は不思議に感じた。


 担任の元へ行き原稿や手順を確認する間佐倉は黙ったままで、必然的に岸田が請け負ってそれを佐倉に支持するような形になってしまった。
印刷室に入った笹田は、手際よく用紙や原稿を印刷機にセットする。
何か会話の話題を作ろうと思いながら、笹田も人見知りする性質なので全く思いつかない。
とにかく早く片付けたい一心で、佐倉には説明もせず一人で作業を始めてしまったのだった。
「へえ、慣れてるね」
 背後から佐倉の声が不意にした。
「う、うん。前にも使ったことあったから」
 早口でそれだけ言って振り返ると、見下ろしていた佐倉と目が合って笹田は顔を伏せた。
自分の意思とうらはらに赤くなる顔を、佐倉に見られたくなかった。
印刷機の重たい機械音が室内に満ちる。音が洩れないように扉を閉めたので二人きりだ。

 読んでる本やテレビ番組などの、当たり障りない話題で友人とは話が出来るのに佐倉とはなぜか出来ずにいる。
そんな大した意味の無い話はしたくない。
席順が前後でもろくな会話はしていないし、佐倉は大抵一人だった。
その背中をいつも笹田は眺めていた。後ろで気付かれないのをいいことに眺めすぎて、項に小さい二つのホクロがあることを知っている。
佐倉は知っているのだろうか、そのホクロの存在を。
「…笹田って、」
「え?! 何?」
「しっかりして見えるけど、そうでもないのか?」
 用紙が切れて点滅しているボタンを一度押すと、佐倉は用紙を補充してスタートボタンを押す。
印刷機は再び勢い良く回転した。
「ごめん、気付かなかった…」
 まさか佐倉のことを考えていたとは言えず、顔が見れずに俯いた。
「違うよ」
 少し吹き出した佐倉の声に弾かれて、顔を上げた笹田は彼の笑顔を初めて見た。
「頭良い委員長の笹田でも、ぼけっとしてるから」
「頭良いって…、ぬきうちの数学テストで百点取ったヤツに言われたくないな」
 思いかけず見せた佐倉の笑顔で、緊張が解けた笹田も自然に笑っていた。

 プリントの印刷が終わり、お互い両手に紙の重みを感じながら職員室へ戻る。
「笹田の名前、瑞穂だよな?」
「…ああ」
 下校時間をだいぶ過ぎた廊下はしんとして、二人の足音だけが響いていた。 
女みたいだと馬鹿にされた小学生時代のトラウマなのか、名前にはあまり触れられたくなかった。
自分でも女みたいな名だと自覚はある。ついぶっきらぼうに笹田は返事をした。
からかわれるのかもしれない、とかつての記憶から無意識に一瞬身構える。
だが聞こえたのは、かつて耳にしたことのない言葉だった。
「自己紹介で初めて聞いた時、綺麗な名前だと思った」
 そう言って笹田を見下ろす黒い瞳は、濡れているようだった。
佐倉の大きな目は常に潤みを帯びていて、白目の部分は青白くそのコントラストで、まるで何かの宝石のように見えることに気付いた。
 その黒々とした瞳から目を逸らすことが、笹田は出来なかった。
 違う。綺麗なのは佐倉の方だ。
 その黒い目の奥に、呆然とした自分の顔が映った気がした。


                                            続く
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立夏

Author:立夏
BL大好きで感想・思ったことなどを、好きなように書いてます。
好きな本ばかりなので、独りよがりなってる自覚はあります。

ほとんどネタバレしてますので、ご注意下さい…。

記事に拍手や拍手コメを、いつもありがとうございます。
拍手コメのお返事は、該当の記事に書かせていただいています。お時間ある時に見ていただけたら嬉しいです☆

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